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データで「売上を作る」B2C CRM:Klaviyo徹底解説
サードパーティCookieの終焉により、EC事業者は「誰に・何を・いつ届けるか」を、自社で保有するファーストパーティ/ゼロパーティデータに基づいて設計せざるを得なくなりました。
この文脈で、Klaviyo(クラビヨ)は従来型のメール配信ツールではなく、「B2C向けCRM兼マーケティングオートメーション基盤」として、D2Cブランドや成長志向のEC企業に選ばれ続けています。
リストではなく「顧客プロファイル」を起点にする
レガシーなメール配信サービスは「リスト」を単位に顧客を管理するため、同一人物が複数リストに重複し、分析も配信も歪みがちです。
Klaviyoは「1人の顧客=1つのプロファイル」というデータベース型アーキテクチャを採用し、購買履歴、サイト閲覧、カート追加、メール開封・クリックなど、あらゆる行動を時系列でひも付けます。
ここに、サインアップフォームやクイズで取得した好み・用途などのゼロパーティデータを加えることで、
- 「豆派/ポッド派」「敏感肌/脂性肌」
- 「ギフト用/自分用」
といった粒度でのパーソナライズが可能になります。単なる「メルマガの宛先リスト」ではなく、「収益を生む顧客データベース」として機能させられる点が、B2C CRMとしての本質的な違いです。
特にShopifyとの統合は深く、過去注文データの自動同期に加え、Viewed Product、Added to Cart、Checkout Startedなどのイベントをほぼリアルタイムで取得できます。導入初日から「過去○年分の購買履歴に基づく打ち手」を打てるのは、他ツールにはない優位性です。
セグメンテーションとフロー:売上の「自動エンジン」をつくる
Klaviyoの最大の武器は、データをそのまま打ち手に変換できるセグメントとフロー(自動配信)の仕組みです。
動的セグメントで「今」反応すべき顧客を抽出
セグメントはすべて動的で、「過去30日間にAカテゴリを3回以上閲覧、未購入」「次回購入予測日が2週間以内」「SMSはよくクリックするがメールは開封しない」といった条件を自由に組み合わせられます。
条件を満たした瞬間にセグメントに入り、外れた瞬間に除外されるため、「今もっとも狙うべき層」に常にアプローチできます。
さらにSegments AIにより、「最近反応がないが、過去に高額購入した顧客」のように自然言語で指示するだけで、AIが条件式を組んでくれるため、分析専門人材がいなくても高度なターゲティングが可能です。
売上に直結する「鉄板フロー」
実際にKlaviyoで売上の柱になるのは、次のようなフローです。
- ウェルカムシリーズ:初回登録〜初回購入を最大化
- カゴ落ち:高意欲だが離脱した顧客を引き戻す
- 閲覧落ち:商品ページ閲覧のみで離脱した層をナーチャリング
- 購入後フォロー:レビュー獲得とクロスセルでLTV向上
- ウィンバック:休眠顧客の掘り起こし
これらを、顧客属性や購入履歴で分岐させ、「靴購入者には靴下」「コーヒー豆購入者には定期便提案」のようなOne-to-One体験を自動化できます。
AIが支える「タイミング」と「投資配分」の最適化
Klaviyo AIは、過去の購買データから個々の顧客について、
- 予測LTV
- 離脱リスク
- 次回購入予測日
- 開封されやすい送信時間
などを算出します。 これにより、「高LTV見込み層には割引より体験重視」「離脱リスクが高い層だけに強いオファー」といった、原価率とマーケ投資を踏まえた精密な打ち手設計が可能になります。
今後は、ブランドサイトのURLを入力するだけでキャンペーンを自動生成・最適化するMarketing Agentや、チャット内で接客〜購買まで完結させるCustomer Agentといった、自律型エージェントも実装が進んでおり、「運用工数ゼロに近い成長ドライバー」としてのポテンシャルが高まっています。
Eメール × SMS:チャネル統合がROIを変える
メールとSMSを別ツールで運用していると、
- 同じ顧客に重複配信
- チャネルをまたいだシナリオ設計が困難
- 成果の全体把握ができない
といった問題が起きがちです。
Klaviyoは両チャネルを1つのプロファイルで管理するため、
- メール未開封者だけにSMS
- 在庫僅少や再入荷など「緊急度が高い通知」のみSMS
- 高LTV顧客だけにSMSクーポン
といったコスト効率の良いオーケストレーションができます。
日本向けSMSはコストが高く、MMSも使えないため、「全顧客に打つ」チャネルではありません。Klaviyoのセグメントと予測指標を活かし、カゴ落ち直後・VIP顧客・高い解約リスク層など、本当に投資すべきポイントに絞ることが成功の鍵です。
料金モデルと「儲かる運用」のポイント
現在のKlaviyoは「送信数」ではなく「アクティブプロファイル数」で課金されます。つまり、メールを送っていなくても、購読可能な状態でリストに残っている顧客にはコストが発生します。
そのため、
- 反応のない顧客の定期的なリストクリーニング
- 高反応セグメントへの集中投下
- メール+SMS+自動フローでのLTV最大化
といった運用が不可欠です。
レビュー機能やCDPなどのアドオンも用意されていますが、それらを追加するかどうかは「1顧客あたりのLTV」と「データ活用の成熟度」を見ながら判断すべきです。
Mailchimp, Shopify Emailとの違いと、向いている企業像
MailchimpやShopify Emailは、低価格かつシンプルで、小規模事業や立ち上げ期には有効です。一方で、
- Shopify等とのデータ連携の深さ
- 予測分析やAIによるセグメント生成
- マルチチャネルのジャーニー設計
といった観点ではKlaviyoが頭一つ抜けています。
「売上の20〜30%をCRMで取りに行く」「広告依存から脱却したい」と考える成長フェーズのEC企業にこそ、投資対効果が出やすいツールと言えます。
日本企業が導入する際の実務ポイント
日本語UIはまだ整備されておらず、管理画面は英語です。ただし、配信コンテンツやレビューウィジェットなどは日本語対応しており、運用体制さえ整えれば実務面の支障は大きくありません。
導入・活用のステップとしては、
- Shopify等との完全連携+過去データの取り込み
- ウェルカム/カゴ落ち/購入後/ウィンバックの4〜5本のフロー構築
- 高LTV・休眠前兆など、ビジネスインパクトの大きいセグメントから順にAIも活用して拡張
- メールでROIを確認したうえで、限定的にSMSを追加
- KlaviyoとGA4のアトリビューションの違いを理解したうえで、独自のKPI設計を行う
という順番が現実的です。
まとめ:Klaviyoは「データを収益に変えるためのインフラ」
Klaviyoは、単なるメール配信ツールではなく、「顧客データを収益に変えるためのB2C CRMインフラ」です。
プロファイル中心のデータ基盤、AIを活かしたセグメンテーションと自動フロー、EメールとSMSの統合、そしてLTVをベースにした投資配分。 これらを組み合わせることで、「打ち手の思いつきではなく、データに裏打ちされた売上成長」を実現できます。
広告効率が頭打ちになりつつある今こそ、EC企業に求められているのは「どれだけ新規を獲るか」ではなく、「どれだけ既存顧客から安定的に売上を積み上げられるか」です。
Klaviyoは、その答えを出すための、非常に有力な選択肢だと言えるでしょう。

