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「データ活用」の役割とは?何から始めるべきか分析・運用の両面で解説
「データ活用」という言葉は、ビジネスの現場ですっかり定着しました。しかし、実際に何をするのかと問われると、「データをグラフにすること」「AIを使うこと」といった断片的なイメージが先行しがちです。
データ活用を正しく理解するためには、これを一つの塊として見るのではなく、**「データ分析」と「データ運用」**という2つの側面に分けて考える必要があります。
本記事では、初心者の方がビジネスの現場で直面する課題を整理し、「なぜデータ活用がうまくいかないのか」その原因となる「データのサイロ化」や「統合」といった重要トピックを含めて解説します。
ビジネスにおけるデータ活用の役割
そもそも、ビジネスの現場においてデータ活用はどのような役割を担っているのでしょうか。大きく分けると、以下の3つの役割があります。
- 意思決定のスピードと精度の向上(判断の役割) 経験や勘だけに頼らず、客観的な事実(データ)に基づいて判断することで、失敗のリスクを減らし、スピーディーな決断が可能になります。
- 顧客理解の深化(対話の役割) 顧客が「いつ」「何を」「どのように」買ったのかを把握することで、一人ひとりのニーズに合わせた最適な提案ができるようになります。
- 業務効率化と自動化(仕組みの役割) 在庫管理の最適化や需要予測など、これまで人が手作業で行っていた部分をデータに基づいて効率化・自動化します。
データ活用は、単なる「分析」ではなく、これらの役割を通じて**「利益を最大化し、コストを最小化するための手段」**なのです。

データ活用の全体像:2つのエンジンの連動
- データ活用には2つの側面があります
- データ分析(可視化・洞察): データを読み解き、次のアクションを決めること。
- データ運用(収集・管理): 分析に必要なデータを正しく集め、使える状態に保つこと。
多くの企業が「どんな分析ツールを入れようか」「どうすればきれいなグラフが作れるか」といった具合に データ分析 にばかり目を向けがちです。。
しかし、実はビジネスにおけるデータ活用の成否を握っているのは、一見地味な データ運用 の方です。この2つがどう関わっているのか、詳しく見ていきましょう。
データ分析とは:「意思決定」のための羅針盤
過去を知り、未来を予測する。 ビジネスにおけるデータ分析は、大きく分けて2つの視点で行われます。
- 過去・現状の把握(どうなっているのか?)
- 先月の売上は目標に届いたか?
- どの商品が一番売れているか?
- Webサイトの訪問者はどこで離脱しているか?
これらは「集計」や「可視化(グラフ化)」によって行われます。現状を正しく知ることがすべてのスタートです。
- 未来の予測・要因の特定(なぜそうなった? これからどうなる?)
- なぜこの商品は20代に売れないのか?(相関関係の発見)
- 来月の在庫はどれくらい必要か?(需要予測)
- この顧客は解約しそうか?(AIなどによる予測)

アクションに繋がらなければ意味がない
データ分析において初心者が陥りやすい罠は、 分析して満足してしまう ことです。 例えば、「Webサイトの訪問者が減っている」という分析結果が出たとします。これだけで終わっては単なる「報告」です。
「訪問者が減っている」 →「特にスマホ経由が減っている」 →「スマホページの表示速度を改善しよう(アクション)」
ここまで繋げて初めて「データ活用」と呼べます。データ分析とは、このアクションの根拠を見つける作業なのです。
データ運用とは:活用のための「土台作り」
どんなに高価なAIツールを導入しても、「分析するためのデータ」が正しく用意されていなければ、何もできません。
この「データをいつでも使える状態に準備・管理し続けること」を データマネジメント と呼びます。データマネジメント は日々の データ運用 のマネジメントだと言えます。
多くの企業でデータ活用が進まない最大の原因は、データ運用において データのサイロ化 という問題が起きている点にあります。
データのサイロ化とは何か?
「サイロ(Silo)」とは、もともと家畜の飼料や穀物を貯蔵する円筒形の倉庫のことです。それぞれの倉庫が独立して立っている様子から、ビジネス用語では システムや部署が互いに連携せず、情報が孤立して閉じ込められている状態 を指します。
例えば、あなたの会社でこんなことは起きていないでしょうか?
- 営業部 顧客の「商談履歴」をExcelや営業支援ツールで管理している。
- マーケティング部 顧客の「Webサイト閲覧履歴」や「メール開封率」を別のツールで管理している。
- カスタマーサポート部 顧客からの「クレーム・問い合わせ内容」を専用システムで管理している。
これらはすべて「同じ一人の顧客」の情報です。しかし、それぞれの部署(サイロ)の中にデータが閉じ込められ、他からは見えなくなっています。これが データのサイロ化 です。

サイロ化が引き起こすビジネスの弊害
データがサイロ化していると、間違った判断や機会損失を生みます。特に問題となるのは セクショナリズム(割拠主義) です。データの境目が組織の境目となり、組織がセクションごとに独立して動き非協力的になってしまう状態を指します。
データ統合:サイロを壊してデータを繋ぐ
データ統合 とは、バラバラに存在しているデータを一箇所に集め、整理し、会社全体で使えるようにする仕組み作りのことです。データのサイロ化の解消が主な目的となります。
データ統合が完了すると、顧客やビジネスの「全体像」が見えるようになります。バラバラだったデータを繋ぎ合わせることで、初めて「正しい分析」と「正しいアクション」が可能になります。データ活用において、 データ分析 よりも前に データ統合 に取り組まなければならない理由はここにあります。
データリテラシー:ツールではなく「人」の問題
データ統合は多くの場合「人」に向き合う事業になります。データをどのように読み解くかについて、個人間で無視できない差があります。データを読み解く能力のことをデータリテラシーといいます。
データを正しく読み取る力 提示されたグラフや数字を見て、「要するに何が言いたいのか」を理解する力です。また、数字のトリックに騙されない批判的な目も含まれます。
データに基づいて判断する力 「社長がこう言ったから」や「今までの慣習だから」ではなく、「データがこう示しているから、こちらを選択する」と論理的に意思決定する力です。
データを扱う力(活用する力) 必要なデータを自分でシステムから取り出したり、Excelなどで簡単な集計をして仮説を検証したりする実務的なスキルです。
データ統合 と データリテラシー が揃って初めて、データ活用は「文化」として組織に定着します。
データ活用は何から始めるべきか?
「データ活用が大事なのはわかったけれど、具体的に何から始めればいいのか?」と悩む担当者は少なくありません。最短で成果を出すためのステップは以下の通りです。
1. 「何を知りたいか(目的)」を明確にする
いきなりデータを集め始めるのではなく、「売上を上げたいのか」「コストを削りたいのか」「リピーターを増やしたいのか」という目的を一つに絞ります。
2. 足元のデータの「所在」を確認する
高度なツールを導入する前に、まずは今あるデータ(Shopifyの管理画面、Googleアナリティクス、Excelの売上表など)がどこに、どのような形式で保存されているかをリストアップします。
3. 小さな「仮説」を一つだけ検証してみる
「このクーポンは20代に効いているはずだ」といった小さな仮説を立て、手元のデータで集計してみます。大きなシステムを作るのではなく、まずは「データで事実を確認できた」という成功体験を積むことが重要です。
データ活用は、大きなシステム投資から始める必要はありません。身近なデータの整理から一歩ずつ進めていくのが、最も確実な方法です。
まとめ:データ活用は「運用」から逃げてはいけない
「データ活用」について、分析と運用の両面から解説してきました。 今回の要点は以下の通りです。
- データ活用 とは、 データ分析 と データ運用 がセットになって初めて機能する。
- データ分析 は、意思決定の精度を高め、具体的なアクションを起こすために行う。
- データマネジメント が不十分だと データのサイロ化 を引き起こし、部署間の連携不足や誤った判断を招く。
- データ統合 をすることで、顧客や自社の状況を正しく把握できる。
- 最後は使う人の データリテラシー が成果を左右する。
もし、あなたが「データ活用を始めたい」と考えているなら、いきなり高度な分析手法やAIツールに飛びつく前に、まずは足元を見てみてください。
- 社内のデータはバラバラになっていないか?
- 必要なデータはすぐに取り出せる状態にあるか?
この「運用」の部分に目を向けることこそが、データ活用を成功させるための最短ルートです。派手な分析の裏には、必ず地道な統合と整備があります。この構造を理解することが、データを武器に活躍するビジネスパーソンとしての第一歩となります。

